G氏

ゴキブリ(以下、G氏)が現れた。この糞暑い季節、虫には好環境にもほどがある。
G氏は台所を徘徊していた。洗剤をぶっ掛けて殺めた。G氏を見たのは三年ぶりくらい。末恐ろしい。身の毛もよだつこの季節。多くの人間はなぜG氏を生理的に受け付けないのだろうか。
確かに汚いというレッテル、異常に生存力があるなどという恐ろしいイメージがあるが、そこまで嫌われる筋合いはG氏サイドも思ってもみないはずだ。
おそらくだが、G氏の歴史は地球全体が噴火、氷河期の時なども生き延びた、人類史をも上回る歴史があることが何か関係がありそうだ。おそらく人間はかつてG氏に散々苦しめられた苦い思い出があるのだろう。そのことが本能的にG氏に対する負のイメージが潜在意識下で発生するようになっているのだと思う。
いうなればGはもともとバイトの怖い先輩で人間は後輩。

バイト上がりのバックヤード
G「じゃあ帰るわ」
人類A,B「へっ、へい!お疲れっす」
G「お前ら今日はよく声出てたな。まあ俺には負けるけどな」
人類A,B「あざす!!」

人類A「たまらんで、何やあのおっさん、偉そうに、繁殖しまくっとるだけやんけ」
人類B「確かに何の意味も分からんと挿入しっぱなしやろうな。でも先輩やからな」
人類A「先輩や言うても、カッサカッサしとるだけやんけ」
人類B「そのカッサカサが脅威やねん。何や知らんけど」
人類A「まあええけど、あいつ商品陳列めっちゃ雑やし、レジ打てへんし、何にも取り柄ないやろ」
人類A「そんでFFのカラアゲとかポテトを作ってると、すぐ寄ってきてつまみ食いや、あのボケ」
人類B「あのボケほんまに食いまくりや、脂肪たっぷりや」
人類A「それも手ぇ洗わずにチンコ掻きまくった挙句の手でボリボリ食っとんねん」
人類B「やめろや、気分悪いわ」
人類A「あれ高卒っていっとるけど実際、中卒やろ」
人類B「あいつ九九とかできんやろうな」
人類A「でもこないだの万引き犯の追いかけは凄かったな」
人類B「あれは、早かった」
人類A「100メートル十秒五くらいのスピードやったな」
人類B「店長もその辺考慮して採用したんやろうな」
人類A「万引き防止のために?」
人類B「いや、知らんで、でもあいつそれくらいしか取り柄ないやろ」
人類A「どんだけ治安悪いだよ、この店」
人類B「店長、何考えとるんやろな」
人類B「とにかくだな、五木田のおっさんは綺麗な奴が嫌いらしいんだよ」
人類A「マンホールに嵌った奴が好みらしいな」
人類B「性癖は異常やろ」

部屋に突然現るG
G「うわあああああああああん」
人類A,B「!!!」
人類A「なんすか五木田さん。ビックリした。忘れ物ですか」
人類B「大声出すと店内に響きますって」
G「お前ら、陰口を言ったからコテンパにしてやる」
人類A「いやいや、何言うてるんすか。あんた」
人類B「僕らもう辞めますよ」
恐竜店長「お前ら何騒いでんだ!馬鹿者!!」
G「いや、違いますよ。この二人が僕の陰口を」
店長「出てけ!出てけ!」

数日後
人類A「潰れちゃったなーあの店」
人類B「もともと治安悪いとこの店だしな。恐竜店長はどこ行ったんだろうな」
人類A「知らねえな。五木田は治験のバイトとかしてるらしいけどな」
人類B「ほんとタフだよな、あのおっさん」