千歯こきの営業選考

私は、体全体が気だるい状態で農機具営業の選考を受けるため会社へ向かった。
そこは、私が通う盆暗大学の近くに位置する郊外の会社。会社の前には改造しつくされた単車が停まっていた。
中に入ると「なんて狭い会社だ…」と思わず苦悩したが、
どうせ記念受験だからいいや、と半ば投げやりな状態で事務室の椅子に座った。

目の前に座っていたのは同じく選考を受けに来たらしき学生。リーゼントで頻繁に髪を弄っている荒れくれた風貌の男。どうやら会社前に停まっている単車はこの男の物らしい。
ブロードバンドだの、光ファイバーだの、ハイテク機器だので近未来的生活に浮かれていた私は、改めて、どうしようもない奴がやってくるような選考に参加しているその現状を噛み締めていた。

今にも崩落しそうな面接室に居たのは、老いた社員三人。
私を見るなり、全てを悟ったのか、無表情ながらに
「志望動機と自己PRを述べてください」などと質問してきたので私は何度もアドリブで嘘八百を述べてみた。

私は、社員三人が私の嘘の内容をあまりにも真剣に聞いていることを実感し、このとき初めて面接というものはそんな大そうなものではないと確信した。
誰が悪い訳ではない。オナニーをしすぎて体をだるくし、家を出る10分前まで行くかどうか迷いながら意識朦朧としていた自分が全て悪かったのだ。

私は、嘘の面接を終え、筆記試験を終え、どこかの本のネタを使いまわしたような内容で作文を書き終え、会社からもらった交通費を手に打ちひしがれながら帰路についたのだった。


※5.31内定通知