停滞

バイトの履歴書。氏名、住所、学歴を乱雑に書き、
「趣味:なし、得意科目:なし、自覚している性格:協調性大」と書き、「志望動機:社会貢献するため」などと簡素に書いたため、履歴書を書くのに5分と掛からなかった。車で12キロ離れた物流施設へ向かう。駐車場で待機。入り口がある。人間が出入りしている。出入りしている人間がいかにもイカつい。なんとなく雰囲気が分かるので妄想で働いてみる。
……
しまった!俺はブルーカラーはもう懲り懲りだったのだ。こんなところでは働きたくない。俺ってヤツは!!
逃げる。面接予定時間になり、物流施設から電話が掛かってきたので俺はこう述べた。
「ちょっと雨が降ってて時間に遅れます」(素直に『面接を辞退します』というのが恐ろしくて、そう述べたときの相手の興ざめた応対を考えただけで吐き気がして自分は、世間で言う”嘘つき”を演じてしまったわけである)。
そういって俺は携帯電話を車のトランクに放り込んで家路に着いた。これは知らぬ存ぜぬでバックレるより性質が悪いかもしれん。俺はまた一つ、愚かしいことをしてしまったようだ。
家に帰ると適当に受けた農機具会社の内定通知が届いていた。二社目の内定通知!しかし、もともと興味も関心もない会社だったので一切の小躍りもせず、淡々と内定通知を見た。