寒い

 地元で働き、地元で暮らしている二十代半ばの金輪。彼は地元に友達が一人もおらず、どうにも交友関係においては無為に過ごし続け、最近では去勢されたように途方に暮れていた。
 無論、彼がそういった状況になることにも其れなりの理由があるように考えられる。話下手だとか、不器用だとか、無名大卒とか、消極的だとか、出不精だとか様々な原因があるように思われる。恋人と云う僥倖を終えた今の彼は、以前のようにネット掲示板で異性で年齢が近い者に盲滅法にメールを送ろうという画策をする気も無くなり(ネットで知り合うという所作が今の彼には嫌悪感があるようである)、やはり生の目を見て話をしなければダメだ、と彼は思うのであるが、今日の仕事でもろくに目を見て会話をできなかったのは言うまでも無い。
 それでも、親ももう孫がいても全くおかしくない年齢であり、どうにも彼はなんとかせねばと焦る有様で、また考えるのであるが、人格、容姿、財力、学歴、趣味教養が合うものなどこの世にいるとはほとほと思えず、結局は独り身のまま、いつの間にか病室で過ごす羽目になり、やがて山にある墓の中にひたひたと入っていく様を想像して、また彼は途方に暮れたようである。 
 彼はそんなことを考えながらテレビを見ると、被災者に比べれば、というおかしな対比思考に陥るのが厭になり(それは以前、彼が殺人事件の被害者と自分を対比して蓄積してしまった厭世観に程近い)、テレビを消し、どうしようかと腹が減り、腹を満たすとどうでもよくなり、吹雪に見舞われた三月中旬のある日は過ぎていくのであった。

Yahoo!トピックス(20:17)
・地上放水へ 機動隊に出動指示
・余震相次ぐ さらに冷え込みか
地震発生5日 官邸も疲労蓄積
・海外からの医師も治療可能に
・東京電 17日も計画停電実施
牡鹿半島、東へ5メートル動く
・「なぜ略奪ない?」秩序に驚き
・NZ CTVビル邦人死者計22人に