図々しさが無いからダメ

俺は昔から自分から動くことが苦手な凄く引っ込み思案な人間なのだ。
高校のときに教師が「分からないことがあったら職員室に何度でも聞きに来い」とよく言っていたが、結局、俺は一回たりとも自分から進んで職員室に行かなかった。職員室に行ったのは赤点ばかり取って呼び出しをくらったときくらいだ。逆に何度も何度も教師にしつこいと思われるくらいアグレッシブに問題を聞きに行くような奴がいい成績を取り、名門大学に行っていた。短大でも教授と親しくしてる奴が決まって推薦で国立大学に編入していた。俺は適当に単位を取ってフラフラしてて結局何も得ることがないまま卒業した。
いまさら悟った。いやもうとっくに悟っていたのだけど、敢えて悟ってないふりをしていた。しかしもう限界だ。俺は自分自身、世渡り不上手なことを認めなければならない。自分の今までの引っ込み思案な生き方を否定しなければならない。
この世の中はよくいえば粘り強い奴、悪く言えば図々しい奴が得をする仕組みになっているのだ。俺はそういうことを無視して無視しまくってそれで、「俺は他人とは違うんだ!」と半ば開き直った感じで引っ込み思案に生きてきた。
残念ながら二十一年振り返っても、俺の今までの生き方は凄く後悔する生き方だと自負するさ、ああ自負するさ。もういっぺん人生を図々しい根性にしてからやり直したいくらいだ。もう今からでもそうするべきなのだ。俺は図々しく生きなければならない。公衆の面前で発狂しなければならない。
俺は無意識に鎖に嵌められていたのだ。引っ込み思案という名の鎖に。そんなものは外さなければならない。
明日、飲食施設に電話する。図々しい生き方をする第一歩。まずは一回辞めたバイトをもう一回やることだ。今日はもう夜だから電話しない。