牧場の宴

午後九時ごろ牧場から電話があった。当時の自分は「昨日あんなこと言ってたけどもう今日は飲み会はないのではないか」と希望的観測を持っており、腑抜けモードに入ってもう寝る体制もできていたし、その日は体調が悪くて外に出る気がもう微塵も無かった。電話。「今すぐ行こう」。私は首肯致しました。断るという選択肢もありましたが、断ると牧場との関係性が歪みだし、修繕不可能なぐらい関係性が悪化するのではないかというよもやの不安が私を襲ったのです。もっとも来月にはいなくなる人間との関係を気にするというのは余程、私も気が弱いのだと思われます。
私の性格は「暇が最も嫌いな性格」というのは自負していますが、飲み会に行けば暇ではないというわけではないということを今回、痛感しました。それにより、飲み会がやっぱり自分には向いてはいないと確信めいた意識を持つようになりました。


私はまずラーメン屋に行ったのです。仕事もしないのに仕事場に行くと従業員がいる以上、何か後ろめたいものを感じます。しかし牧場の最期なのでいたし方がありません(ところで送別会めいたことを複数回しなくてもいいだろうと思います。欧米じゃあるまいし)。輩どもが到着してから、つづいてファミレスに行きました。飲み会というより座談会といった感じでしょうか。とにもかくにも五人が集まり、何か打ち解けていた様子でした。自分、牧場、亀吉、浜地、飯塚のメンバーでした。私は声がオフモードで、まったく滑舌の悪さは酷い有様でした。ここで亀吉がスネ夫の如く海外旅行に行く自慢をしだしました。その話に短期留学経験がある飯塚が食いつき、二人、盛り上がっていました。本当に島国に篭り続けている私にとっては胸糞が悪い話題でありました。牧場は席の関係上、浜地とトークを広げていました。やはりというか、当然というか私は孤立していました。まったく面白くなく、家で寝転んでいるときの独り言の方が多いのではないかというぐらい口数がすくなかったのです。亀吉は私を弄りキャラと見立てて仮想攻撃を仕掛けてきました。私はそれに食いつくだけという実に虚しい実情、時間を過ごしたわけです。
続いてアミューズメントパークへ行き、スポーツ競技を行いました。私も個人的には調子が良かったのですが、世間から見れば不具者並の技術力でした。居酒屋やアミューズメントパークといった類の場所は非常にけたたましく叫ぶ、若い人間が存在し、劣悪な感情が芽生えてきます。いつも思いますが、こういった類の場所に就職するくらいならそれこそ舌を噛んで死にたいと思います。
どうやら水曜日も飲み会ですが、私は直訴して、飲み会をする時間帯のラーメン屋のシフトに入れてもらうことにしました。