記憶

今から10年前のことを思い出そうとしても数えるほどの情景しか浮かばない。晩秋のテスト時間(カラーの馬鹿でかいテスト用紙だった)、ストーブの効いた教室で教師がやわらかい声で「中学に行ったらこんな楽してらんないぞ〜」って言ってたのがかなり印象に残っているけど、その他の記憶は山に探検に行ったり、えーっとあとポケモンに嵌ったりしてたっけってな感じで瞬時には数えるほどしか浮かばない。
人間の記憶って果かないものだと思う。10年前は10年前でいろんな細かいことに悩み、苦労してただろうに、それらの記憶は瞬時には思い出せない。埋没してしまっているのだ。もう無かったことのようになっている。
10年後、2017年の自分はやはり2007年のことは日記でも見ない限り、数えるほどしか思い出せなくなっているんだと思う。そして2017年の自分は1997年の情景のストックを、今持っているそれよりも多く失っていると思う。
今年起きたバイトでこんなことがあっただの、学校でこんな講義があっただのという記憶の多くは埋没する羽目になる。とてもさみしいけどそれは仕方が無いことだ。人間は死に向かっているのだから。