待機

食べ終える時点においてもう二度と口にしたくないと思うカレーをまた食べに行ってしまうという悲しい習癖。自分には信念という言葉が不相応であり、一度固めた決心を覆すことは往々としてあるのです。
外出。自分は恐ろしい、という気持ちを常に抱いており、面接に行くにしてもいつも恐ろしい気持ちで会社へ入り、美容院へ入りたくても、あの華やかな白塗りの店内で働いている美容師、客が恐ろしく、服屋へ入ると、試着室へ行こうとして店員に声を掛けるのが恐ろしく、常にぎこちなく、行き過ぎた緊張感により、まるで犯行現場に証拠を回収しに来る凶悪者のような心境になるのです。それで仕方なく、極度の近視でありながら、メガネ、コンタクトを装用せずに外出するという暴挙に出る有様でして、なんといいますか、自分は恐怖の取り除き方がないかと常に試行錯誤しており、また自棄になることもあり、結局、ゴロゴロとして一日が終わることが多いわけです。
自分は例の最終面接を終えてから特に何も考えておらず(仮にそのとき受けた会社を「E」とします)、採否判明まで時間が掛かるようであり、未だ何ら変化もなく、戦争映画を観るなりしていました。


Eの最終面接は質問攻めでした。まるで取り調べのようで、浅黒い40代くらいの男に永延と取り調べられました。事務的に面接は進み、ことのほか嘘もうまく突き通したと確信し(自分は便宜上、面接で苦学生を演じているのであり、自分の一風変わった学歴を説明するときに往々として学費を稼ぐために空白の一年を使用したと平然と嘘をついています)、自分はいつものように詐欺師や変態のような心境で面接を終えました。
その面接を終えてからといいものの、自分は卑猥な雑誌を闇雲に購入し、闇雲に行使いたしました(自分はEの面接まである程度の禁欲をしていました。面接を終え、欲求を解放することに致しました。しかしながら、生身の女性と対面するほどの行使力が残っておらず、何も言わぬインクまみれの物品に頼らざるを得ませんでした)。そして例の如く罪悪感に苛まれ、それから戦争映画を借りにいき、映画を観ているうちに「捕虜になりそうになったときは自決しよう」という今の日本においては全く無意味な決心が芽生えました。
そのうち、自分はカレー屋に行き、食べているうちに、もう二度と食べることはないと決心し、カレー屋を出ました。