藤子・F・不二雄[異色短編集]

6作選んでみた。
ミノタウロスの皿: 藤子・F・不二雄[異色短編集]  1 (1) (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)気楽に殺ろうよ: 藤子・F・不二雄[異色短編集]  2 (2) (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)箱船はいっぱい: 藤子・F・不二雄[異色短編集]  3 (3) (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)パラレル同窓会: 藤子・F・不二雄[異色短編集]  4 (4) (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)

オヤジロック(1977年)

馬鹿でかい岩を売るセールスマンのお話

日本での普及率ってやつはなんでも50パーセントをこえると爆発的に上昇するんです。カラーテレビ然り高校進学率然り!

間引き(1974年)

コインロッカーに赤ン坊が捨てられる現象を考察

近頃の一般的な社会現象から感じませんか?
異性愛 肉親愛 隣人愛 友情……あらゆる愛情が、
最近急速に、消滅しつつあることを感じませんか?
実にあっさりと血を見るのが今日この頃です。
長年絶対視されていた道徳の基盤がひっくり返りつつある!
「生命の無差別的絶対尊重」という……
そう思ってみれば、この「愛」なんてものは種の存続のための機能のひとつにすぎないんだね。
だから、これがじゃまになれば取っぱらってしまえということですよ。
自然の摂理というか大いなる宇宙意志が介入してきたんですよ。
今後ますます激しくなるでしょうな
憎み合い殺し合い……
効率の良い「間引き」が行われて………
適当な人口にまで減った時 人類は再び愛をとりもどせるかもしれません。
昔の人は見ぬいていたんですね。
「衣食足りて礼節を知る」ってね。

定年退食(1973年)

昨今の老人主体の社会構造に警鐘を鳴らしているような気がしないでもない。といっても1973年の作品。F氏は未来を見据えていたのか。

73歳以上のかたがたは本日をもって定員カードの効力を失うものとします。
年金、食糧、医療 その他一切の国家による保障を打ち切ります。

どことなくなんとなく(1975年)

どこがどうってことはない。
これまでとまったく同じ生活圏でまったく同じ人々と顔をつきあわせ…………
つまるところ、なんの変化もない毎日が過ぎていくんだ……


子供のころにたようなことを考えた…………
つまり、この世に実在するのはぼくの意識だけで…………
まわりをとりまくものいっさいがぼくの意識が生みだした妄想じゃないかと……

あのバカは荒野をめざす(1978年)

過去の過ちを修正するため、過去の若い自分を説得しようとする話

結局………道をあやまるのも若者の特権ということかね。
だれにも止めることはできない。
それにしてもあいつ………燃えてたなあ。
あれがかつてのおれの姿だったんだ…


あてはないがね。なにかをやってみたくなった。ひと花咲かせられないものでもあるまいよ。なあにおれだってまだまだ…………

ある日……(1982年)

みどりヶ丘シネサークルでの映写会の模様。終始無言の佐久間氏という男が突如ペラペラと

あんた達だってしってるはずだ。世界を何度も焼き尽すに充分な核ミサイル網が、今、この瞬間に発射可能な状態で世界中に配置されてるのを!!
網の密度は濃くなる一方なんだよ。保有国だってこの先どこまで増えるか…
地球を燃やすにはもうほんのちょっとした火花で足りるんだ!!
「ある日」は「唐突」にやってくる。「伏線」など張るひまもなく、「説得力」のある破壊なんてあるものか。「ある日」がいつくるか……今日にも……


プツン…