リアリティ

ふわふわとした羽毛を身に纏った鳥だけが、活発に動いていた。夏よりも迫力のある飛ぶ鳥は断続的に降り続く雪の空へと消えていった。
一月に入り、雪続きのために判断力が鈍っている。昼飯を食べようというときにココアを買ってしまい、冷や飯と合わせて飲食することになってしまった。それでも熱いココアは寒気を被った体を労わるには貴重であった。
昼飯を食べ終わると携帯電話でネットに接続し、ニュース掲示板を見ることが多い。そこには世界各国、日本各地の出来事が書き綴られ、あらゆる匿名人間のレスが書き連ねている。芸能人の活動模様、スポーツの結果、交通事故、素っ頓狂な事件。あらゆる現実が、携帯電話の小さな画面にきわめて非現実的に占拠している。そうした非現実的な見えない他者の現実の波に浸されてしまうと、自身の現実を直視する機能が低下してしまうことは分かっている。ただ、見えない他者の現実に自分の残り時間を使われる危機を身をもって覚えることにより、午後から現実的に仕事をすることができる。これはリアルに近づくことではないか。
などと思いつつもやはり寒い天候に午後も参った。移動中、震えていた体に車内の暖気が吸い付くと、シネコンができる前の古臭い映画館の雰囲気を思い出す。映画館で売られていたポテロング、光る怪獣の景品。
子供の夢みたいなことを本気で考えてはいけないよ。怪獣を容赦なく放り出して、羽毛を身に纏ってあくびをしたくなるのがリアリティだよ。