花冷え

 粉塵塗れのハンドル、フロアマットだけが視界に入る。雨が止んだ肌寒い昼休み、ショッピングモール内の駐車場、汚い軽トラック内でうつ伏せになりながら、さて午後は何をしようかと窓際ならではの焦燥感に浸っている。
 昨夜、課長が他所の部長から怒鳴られた。持ち場を粉塵で汚した者がいるとかなんとか。それが無くともさっさと帰る連中ばかりの窓際部署は他から目の敵とされている。会社レベルで考えたら足並みを揃えようという気持ちを見せるためにも帰るのは遅らせた方がいいのかもしれないが、宇宙レベルで考えると全てがどうでもよくなってくる。それと自分のF県の出張が取り止めとなった。単にF県の人が頑張りすぎたことが理由だ。
 会社の若年者のみの呑み会開催要項が送られてきた。自分が最年長とか勘弁してほしい。
 帰宅すると夜のパート勤めの親の気味の悪い書置きがあった。近所の物音云々に関することで神経症染みた内容だ。自分は学生時代、親から神経症をうつされた。書置きは破り散らした。
 何かしらの罪悪感を打ち消すために明日も仕事に出る。