tabi day

 朝起きて朝食を摂って、着替えて、荷物を準備して車を動かす。仕事に向かうのは一見、簡単なように思える。だが、簡単のように思われることをするために、人間はいろいろ感じているものだ。朝起きて、時刻を確認する。家を出る時間から逆算して、まだ余裕があると感じると、もう少しだけうたた寝する。そして起きる。朝食を食べるのもまず水を飲んで体を覚ましてから食べる。着替えはその日の日中の気温を考えた服装、荷物もその日の天気によって飲料水の量を調節する。家の外に出て車に乗るまでにもいろいろ考えるし、車に乗ってから最初の交差点に着くまでもいろいろ考える。そこまで文章に起こすのはだるい。一日の細かい描写一つ一つを丹念に描いたそんな日記を見てみたい気もするが、さすがに無さそうだ。
 世間のマジョリティはここ三週間で三度目の三連休だそうだが、盆から正月の間に三連休以上が存在しないシフトである私は、またいつも通りのルーチンワークを朝からこなすのであった。同期の吉年の月一回休みがあるかないかの激務営業環境を考えると、日曜日が確実に休める環境にある私はまだ恵まれているほうだろうとは思う。
 朝は空いているが、昼になれば交通量は瞬く間に増幅する。数珠繋ぎに出来る渋滞。行楽日和ということもあってか、ツーリングやドライブに出かけるものも多いようだ。正直申し上げると、私は彼らを見ても石ころを見るような心境であった。どんなに数珠繋ぎの渋滞ができていようともおそらく、その中には知り合いの一人もいるはずも無い。稀にいたとしてもどうせしょうもない、会話が成立するかどうかってレベルの知り合いだろう。ただ自分がその日を乗り切るためには己が存在の現実感、それしかない。
 信号が変わったのでギアを入れて急発進させると、荷台の工具箱がゴンと音を立ててずれていく。窓を開けて運転するにはちょうどいい気候。夏の疎ましい暑さから開放されたせいもあってか調子はよい。
 腹立たしい気持ちは常にあるが。