「サッカー」

 サッカーは学生時代の体育の時間にやったことがある。運動音痴なのに高校の時ループシュートを決めたらやたら驚かれた記憶がある。だがほとんどはボールも触れずにただ走ったり立ち止まっているだけだった。


 立ち止まっているだけだった。クラスメートと打ち解けられずに退屈で胃腸の弱い日常がひたすらに続き、解消のない不安に襲われ、出会いや恋愛や冒険もしない帰宅部としてうつらうつらと「結婚もできねーし、女に触れることもこの先ねーんだろうな」と机に突っ伏して馬鹿みたいに存在していた頃、同じ市内の高校で本田圭佑は世界を目指して熱く存在していたんだな、と今更ながら思う。世界を目指す奴と机に突っ伏す奴じゃ差が出てトーゼンだ。
 だけど今の俺は失望も絶望もしていない。机に突っ伏した世界もそれはそれでありだと思う。一人ぼっちでも楽しいし、人生なんて棒にふっちまってもいいんだよ。