白い日

そういえば去年の白い日に実家に帰ってきたのだ。そういうことも分かるから一年以上日記を書くといろいろと便利だ。まあそんなことはどうでもいい。
今日はホワイトデー。個人に返すあては全くない。高級感もへったくれもないチープな感じのキャラメルを麺屋の支度部屋に帰り際に放置しといた。「美人の皆さまへ ○○より」と書置きしといたがこんなんで大丈夫だろうか。アメリカンジョーク的策略でウケを狙った書置きなのだが、こんなんで大丈夫だろうか。多分、ダメだ。
今日は10-13:30にバイト。理系の大学の学生でタメの正夫(仮名)と牧場社員と同シフトだった。正夫は12月からバイトを始めたばかりなのに頻繁にシフト入っているから軽快なフットワークで物覚えが良く華麗な労働をしている。バイト時間が終わってから支度部屋でいろいろ喋った。理系の大学のこととか俺のコンビニバイトのこととか花粉症のこと、いろいろと話をした。
何の気なしに俺は「まだこんな時間か。暇だなー」と言ったら
「えーっ!暇なんだ…」となぜか驚愕の正夫。
待ってくれ正夫。こういうセリフを俺が言うってことは、つまり暇だというのはこれから(何かしようか)みたいな友好開始の合図だったのになんでそんな人を小ばかにしたような感じのリアクションなんなんだよ。勘弁してくれ。俺もう駄目だ。それに俺しょっちゅう暇なんだって。
このセリフの受け答えからの俺の憶測。正夫の野郎は友達にも恵まれており、バイトが終わったらいろいろやることもあるし、忙しい。こんなわけのわかんねえ専門か短大か知らんけど2年制の学校を卒業してわけわかんねえ奴とは濃く関わりたくねえ、ということだろ。いや失礼、これはさすがにネガティブすぎる思考だった。つまりその、なんというか俺はこっちがアプローチすると向こうが逃げるという図式を凄まじく恐れているからこういう思考に至るんだ。畜生。結局、独りで店を出て適当にドライブした。食欲がないから適当にドライブしてそのまま帰った。ところで俺がバイト以外で外出する理由の八割が飯を食うことというのが悲しい。
普段、一日平均、原稿用紙一枚分くらいしか喋らない俺が、珍しくいろいろ喋った後の虚無感というのは毎回、毎回独特のものがある。(あー…、あれの表現はもっと曖昧にしとくべきだった。二つ、三つ作り話をしてしまったが、以後どうやってツジツマを合わせようか…)などという後悔の念に苛まれる。しかし、ダメだ。振り返ってはダメなのだ。終わった会話のことはすぐに忘れることが大事なのだ。いちいち反すうしていてはいけない。作り話のツジツマを合わせることなんて突発的にうまい嘘をつけばいいだけのことなのだ。そんなことを無駄に思い返して悩むことはない。
虚無感の原因はまだある。俺にはつまり、バイト上でしか人間と交流する機会がないが、他の人間はおそらく、いや当然バイト以外にも人脈というものが形成されており、まだまだ今日は他の人間は様々な人間と好きなだけ会話をするんだ、だが俺はもう今日は生身の人間とは会話しない…、みたいな比較をしてしまい非常に憂うつな感じになる。