山奥へ行ってみる

来年の三月に大学を卒業するはずの私は論文作成を命じられている。論文は十月一杯に書き上げてしまわなければ十一月の発表に間に合わない。私はまだ何も手をつけていないに等しかった。明日やろう精神でことが進み、どういうわけかただ書籍の中の内容を褐色になりながらならべてそれをちょこまかと編集する程度に終わらそうか、いや、それではダメだと苦悩するあまりで結局今に至っているのである。なぜ書けないか?それは意志が弱いからだ。
それにしてもどういうわけなんだろう。夏休みに入って1ヶ月たつのに学校関係の人間とはいっさいの接触が無い。ジョージが飲み会のメールをそのうち送るだと言っていた気がしたが、まるでない。なんせサークル無所属、友達なし、一年遅れの編入生だ。どうにもならない。もっとも誰かがいきなり話しかけてきたところで何を話せばいいかがわからない。結果、毎度繰り返している孤立パターン。
部屋にいれば何も浮んでこない。まだ若い。ちょっとした契機で全てをひっくり返すことも可能。そんな流れがどこかにないかとまた今日も出かける。

小雨が降るあいにくの天気で急カーブ。トンネル。ひたすら山道。

山中のどこか。特に何もなし。

ダム。ダムを見ていれば気持ちも落ち着く。ダムだけが頼り。

道を外れて農道を通るとねぎが。小学校低学年時にねぎの観察をしたことを思い出す。

農家のなにか。