苦月のウタ

重き荷を負いて/中島みゆき

足元の石くれをよけるのが精一杯
道を選ぶ余裕もなく 自分を選ぶ余裕もなく
目にしみる汗の粒をぬぐうのが精一杯
風を聴く余裕もなく 人を聴く余裕もなく
まだ空は見えないか まだ星は見えないか
ふり仰ぎ ふり仰ぎ そのつど転けながら
重き荷を負いて 坂道を登りゆく者ひとつ
重き荷も坂も 他人には何ひとつ見えはしない
まだ空は見えないか まだ星は見えないか
這いあがれ這いあがれと 自分を呼びながら 呼びながら

掌の傷口を握るのが精一杯
愛をひろう余裕もなく 泥をひろう余裕もなく
ひび割れた唇は噛みしめるのが精一杯
過去を語る余裕もなく 明日を語る余裕もなく
がんばってから死にたいな がんばってから死にたいな
ふり仰ぎ ふり仰ぎ そのつど転けながら
重き荷を負いて 坂道を登りゆく者ひとつ
重き荷は重く 坂道は果てもなく続くようだ
がんばってから死にたいな がんばってから死にたいな
這いあがれ這いあがれと 自分を呼びながら 呼びながら

時代/中島みゆき


今はこんなに悲しくて
涙も枯れ果てて もう二度と笑顔には
なれそうもないけど


そんな時代もあったねと
いつか話せる日が来るわ
あんな時代もあったねと
きっと笑って話せるわ
だから今日はくよくよしないで
今日の風に吹かれましょう



まわる まわるよ 時代はまわる
喜び悲しみ繰り返し
今日は別れた恋人たちも
生まれ変わって めぐりあうよ


旅を続ける人々は 
いつか故郷に出会う日を
たとえ今夜は倒れても
きっと信じてドアを出る
たとえ今日は果てしもなく
冷たい雨が降っていても


めぐる めぐるよ 時代はめぐる
別れと出会いを繰り返し
今日は倒れた旅人たちも
生まれ変わって 歩き出すよ


まわる まわるよ 時代はまわる
別れと出会いを繰り返し
今日は倒れた旅人たちも
生まれ変わって 歩き出すよ
今日は倒れた旅人たちも
生まれ変わって 歩き出すよ