真珠の山と吝嗇な人

まるで雪の上にくねった足跡を作る毎日である。


朝から山が雪化粧を始めていた。
「いえ旦那、これは綺麗になるための化粧ではございませぬ。鳥や人間に適当に批評されるためにしているだけです」
胡坐をかきながら山はそう述べていた気がするが、幻聴である。
雪とはしみじみと降ることに意義があるというのに、バカスカとドラ息子の如く降られては困る。しかしそれが自然であって、人間誕生以前から続くものなのだから何も言えない。大自然に臆する人間の脆さとはいつの時代も変わらぬもので、切実ですな。
労働。今日の朝礼は私が行った。元気な若者を演じた。一瞬なら何にでもなれる。午前、午後共に嘱託のGさんと行動し、今日は終了。一円も使わずに直帰した。
私が今、社会人一年目を経験していることは冒険でも何でもないのです。卑しい見栄みたいなものです。この経験が自慢になるとは思っていません。ただ、吝嗇な者です。