ソシエティーアクション

新入社員が大した仕事も与えられず、ただ黙々と工場の掃除をしていた。ついこないだの自分を見ているようであった。当分の間まともな仕事を貰える見込みはなく、かといって会社を辞めるだけの確たる理由もなく、ただ空白に近い所作をする毎日。
奇妙に絡みあった絶望的な状況の中で、何ヶ月もの間、僕は耐えてようやく仕事を与えられていた。


ときどき、まるで義務を果たすかのように僕は憂鬱になる。
冷静に考えれば僕が憂鬱になる理由などなかった。僕の今居る部署は他部署に比べて大した残業もないし、それなりにやっていれば会社に貢献するだろう。僕はその仕事をある程度はこなせることを予感している。思わせ振りを捨てれば、それなりにうまくやっていけるだろう。
もともと僕には大した欲はない。仕事なんて、今まで経験したアルバイトと似たようなものだ。学生から正社員になることで責任が強くなると嘆く人は僕の周りには多かったけれども、それがそんなにひどいことだと僕は思わない。たぶん、仕事をしてないときに存分に悩みこんで、仕事をしているときはひたすら走り回って、煩悩を投げ捨てているので巧くやっていけることになっているのだ。


たまに外食してそこで働く人々を見るけど、
あれは僕にはあまりにも動きが忙しすぎる。
客の言いなりになって、ひと息いれたり、深呼吸をしたりという余裕がまったくない。
おい、たかが仕事じゃないか、といつも僕は思う。
どうしてそんなに忙しくあっちみたりこっちみたりしなくちゃならないんだ?
どうしていちいちそんな複雑にみなくちゃならないんだよ?
そんな風に考えているとまた憂鬱になってくる。
でもどうせそれは他人のことなんだけどね。
心が休まらないニートをするか、心が休まらない正社員をするか、それを決めるのは自分だけだ。