金曜クライシス

糠はすぐに腐り、悪臭を放ち、害虫がうようよといた。自分の仕事は特に夏がしんどい季節だ。同期の池山の部署はもっと大変そうだった。夜遅くまで働き、土日の展示会にも出向くようである。
今日も服が汚れ、小さな差別のようなものを感じ、そして心境が悉く変わり、繊細な気持ちを太く見せようとしたりもしていた。
昼間に牛丼を食べ、背中の痛みから電器店のマッサージ椅子に飛び込んだ。多少、服が汚れていたが、疲れてそんなことはお構い無しだった。気にしすぎはよくないと思い、今日は強気で行こうと思った。しかし気力は限りなく無気力に近く、心は溺れかけていた。
メリメリと運転をし、次の現場に行こうとすると見通しの良い、信号が続く道路の一つの信号を渡る際、黄色になり、赤色になりかけていたが、どうにも強気で止まる気になれず、思わず突き進んだ。瞬時に白バイ隊員が伴走しだした。見事な追跡だな、と思い、首肯し、切符を切られた。人生の台本があるなら今日切符を切られるのが台本どおりなのだろう。
9,000円を納めることになった。隊員が述懐しだす。
「私はスピード違反で捕まって金を払わず、就職を取り消されて、警察官になったんだ」
得意げな顔で話すそれは、滑稽な話である。この隊員はこの話をこれからずっと使い続けるのだろうと思うと、苦笑するしかなかった。
四六時中、国道、県道を走っていて私は疲れていた。幾度と無く走り、夏の糠に塗れ、ヘトヘトに疲れ、大金を出費してもどうでもよく、ただ布団に溺れるだけである。