とある作風で書いた手抜き日記

僕は二十五歳で、そのとき車のシートに座っていた。十二月の冷ややかな雨が渋滞する車に打ちつけ、小規模な会社に着くと、雨合羽を着た整備士たちや、錆付いたフォークリフトや、そんな何もかもがブルーカラーの象徴のように見えた。やれやれ、また会社か、と僕は思った。
「これが一生つづくわけじゃないんだ」と僕は胸に手をあてて、考えた。「いつか終る。終ったところでもう一度考え直せばいい。これからどうしようかってね」
「どうしてそんなこと言うの?」と軽トラはガソリン混じりの湿った声で言った。軽トラの声を聞いて、僕は自分が何か間違ったことを口にしたらしいなと思った。僕はそれ以上答えなかった。
会社の求めているのは僕の腕ではなく誰かの腕なのだ。会社の求めているのは僕の労働ではなく誰かの労働なのだ。僕が僕自身であることで、僕はなんだかうしろめたいような気持になった。