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労苦。突然何もかも嫌になるときはある。四方八方を雪で囲まれて体温が低下すること、侘しい田舎道、粉の臭い、制服の汚れ、確認癖が強くなること、白々しい午後、老人の休日、働くこと、全てが嫌になるときがある。
自分の工具が錆び切っていたのを見て、ダメだなあと思った。イチローや松井はグラブやバットをピカピカに磨いているというのに。やはり勘に頼って生きてきた仇だろうな。
同期の吉年が東京で表彰をされてきたらしく、土産の菓子を持ってきた。二十四歳の男で建設業の仕事をするオヤジの子供の割にはおとなしい男だが、努力家である。喜ばしいことだ。
ああすればよかった、こうしとけばよかったは愚かな考えだ。無視しよう。頭の中で形状を思い浮かべてまで悶絶してストレスを溜めるだなんて反吐が出る。寿司屋には寿司屋の苦労があり、漁師には漁師の苦労がある。俗物でもいいから騙されたつもりで生きてみる。