煩悩の火

 彼は悩んでいた。金の切れ目が縁の切れ目でJとの関係が破綻し、またしても親しい者が誰一人いなくなってしまったのであった。彼は「○ーネット」の婚活は難儀の上、休会し、代わりに月二千円弱で有料会員として利用できるヤ○ーパートナーを利用しているが、ロクに返事が来ない。殊更に女は有利だ、男は不利だ、というつもりはサラサラない。だけども男って生き物は消極的だと本当に何者にもなれやしないのだと彼は気付く。
 今月末は自動車保険の四万弱の支払いがあったのだった。Jに金を貸したせいで払えないので親に借りるしかない。先週から猛暑で体力を奪われたため、東北旅行は中止。
 久々に中島みゆきの「糸」を聴く。会社に入って早々、研修で某関東に行き、その日の研修が終わり、わずかな自由時間を単独行動でつくばエクスプレスに乗り、近くの駅に移動し、トボトボと独りで歩きながらアイポッドで「糸」を聴いていたのだ[2009年4月]。23才で誰とも付き合ったことがなかったあの頃、人恋しかったあの頃を思い出す27才の彼は、織りなすこともあったけれども綻びてしまった糸を紡ぐ方法を欲しているようだ。