ゼミの飲み会

痛恨の道化だった。痛ましい道化だった。
今宵、私はゼミの飲み会に行ったのである。
まず仮にジャージ君としておこう。声を掛けてくれたジャージの野郎が車に乗せてくれたので迅速に飲み会会場へ到着することが出来た。
場所は焼肉屋だったろうか。ゼミのメンバーというのは多種多様であり、なんというか話を聞いていると底辺大学ということもあって底辺高校出身者多数、少年院にいってた人間とかいろいろな過去を持った人間がいることを知った。
私はおとなしそうなグループと同じ席だった。
私はこの7ヶ月間、学校においてはずっと根暗な男を演じ続けていた。もちろんゼミも言葉数少ない、なんというか〝借金十億〟みたいなテンションのキャラを貫いてきた。
今回も序盤はしずしずと静かに食事をしていたが、ビールの二杯目で私は勝負に出たのだ。今まで全く喋らなかった私が堰を切ったように怒声を出す。まずは周辺のジャージ君らおとなしい奴らから威嚇する。「おら!しっかりしろや!」などと高圧的キャラ。完全に悪ノリ。そして講師にも威嚇。「夜の営みはどうなんすか!!ええ!!」周辺は爆笑。というか引いていたとも思う。尚、周辺は悪酔いする私を心配していたが、私自身は酒を数杯飲む程度では酔わないので酔ったふりをし続けていただけなのである。全ては演技だ。酒の力がなくてもこの程度の道化は楽勝。むしろ稚拙なキャラすぎて張り合いが無さ過ぎる。まあ黙っているよりは格段に張り合いがあるが。
そしてビールにソースなどをミックスさせて飲むという悪行に出て、場を盛り上げる。ムカつくくらいに皆、爆笑しやがる。少年院出の野郎が夢中になって悪行のフリばかりしやがる。ったく反社会者はすっこんでろ。
にしてもギャップの力というのは恐ろしい。常人がこういうテンションになっても大して面白がらないはずなのに、借金十億キャラがはっちゃけると皆大騒ぎ。写メでパシパシと撮られまくる。ああなんだこの感覚.
調子に乗って女子に「もういいっての!!」って怒鳴ってしまった。ああやっちまった。こういう傍若無人なキャラは世間に干されて日陰者扱いされちまうってのを忘れてた。女子の私への好感度は下がった。いやもともと好感度なんて無いものと考えた方がいい。酔ってるという設定があるからまだ救いだがもう傍若無人キャラは止めよう。
リア充もいっぱいゼミにいる。彼女があれやこれや、彼氏があれやこれや。別世界だね。
酒を飲むと完全にキャラが変わると思われたようだ。飲まなくても簡単に変えられるってのに。まあこういうキャラは賞味期限が短い。あんまり多用したくない。
最後の方は本当に酔ってきて女のスカートを凝視してやばいこと考えていた。危なかった。私の酒癖は決して良くないのだと思う。
「konrinzai!キャラ変えたらおもしれーぞ!!」
終始、こんなことばかり声を掛けられた。
こんな鳥小屋レベルのとこで笑われても仕方ないだろう、ましてやこんな高圧的キャラは普段の借金十億キャラありきで成立しているのでよそでは役立たずのキャラだ。
などと私は心の中で悪態を突いていた。
ジャージ君の車で家まで帰った。ジャージ君と結構雑談したら、かなり喋れる口。久々に一対一でまともに喋ったなあ。
R-1のエントリーシートを書いた。明日出してこよう。