呼出

さっき、鳴らない電話が突如として鳴った。俺が一年近く前まで働いていた麺屋で今もなお働いているという正夫(過去日記参照)からだ。一年ぶりの正夫の声が電話口に聞こえてくる。。突き上げるような懐かしい感情。今まで労働した場所の中でも最も思い入れのあるあの麺屋。畜生、懐かしい。
そんな競りあがった感情お構い無しに正夫がひょうひょうと話し出す。なんつーか腹が据わってるな。
「店が潰れるんですよ」。そのなんていうか、あの愛着のあった麺屋が完膚なきまでにぶっ潰れるらしい。なんてことだ。開店から3年足らずで潰れる…。虚しいがこれも世の中の流れだ。
そして二言目に正夫は「店が潰れるから来月打ち上げをやるから金輪際さんも来てください」と!
臆面もなく俺は震えた。人望がまだ繋がっていたのだ…! もうこれはこの話に乗る乗らないどころじゃない。
無論、俺自身、打ちあがるかは不明だ。下手したら、いや、下手しなくても逆に喰らい、失態を犯すかもしれない。アルコール、雑話、正直厳しい。しかし、この性癖は俺自身も理解している。暗転することばかりを考えるのは負け癖が染み付いているということ。
俺は一理の好転を求めて快諾した。