バックレ気味の学祭

行動するのはいつも一人。
学園祭のゼミナールの出し物に参加するべく、いつものようにずば抜けたバックレ発動機を搭載した体で朝9時半に学校へ行く。行ってみるがゼミナールの人間が誰もいない。この時点でダメ過ぎる。まごめいた俺は不安を胸に辺りを徘徊する。ギャルやらギャル男やらが張り切っている。実行委員は背広を着ている。この空間、俺には不釣合いじゃないかと思い始めれば、もう頭はバクハツ寸前。
ゼミ生とは一切のメール電話などといった電気通信の情報を交換していないから時間がどうとかいう情報すら知りえない、俺はいわば学生生活不具者だ。
とりあえず時間を潰すしかないだろうと、一時間半ほど外を散歩する。ジュース片手に散歩。大体、歩き終えたが、もう少し遅くても大丈夫だろうという意味不明の安心感から公園ベンチでゆっくりと考え事。この年で孤独な中年のような行動だ。いったいどうなってんだ。
正午過ぎに学校へ行ってみるとゼミ生がうごめいている出店が存在していた。平穏無事に営業しているようで、そこそこ売れているようだ。
ゼミ生が多いせいか、俺には全く仕事がない。とりあえず今年はバックレてないというアピールをするために存在証明だけはしておかねばと思いボーっと突っ立つ。客がどんどん買いに来る。ゼミ生働く。俺は浮いている。プカプカと。異空間からさ迷いこんだ自縛霊のように突っ立っていたと思う。辺りを見渡すが充実した人間が蠢いていることとグルメな出店が並んでいること以外、何事もない。
一応、ゼミ生にいそいそと声を掛けられたりしたので完全なサボりだとは思われんだろうと二十分後、自分は微弱な安心感を抱き、結局何もせずに秘密裏に出店を出た。
大声が聞こえるのでその方向に行くと、M-1にも出たことのあるそこそこ名の売れた漫才師が漫才をしていた。ボケがボケてツッコミがツッコむというありがちな漫才を二組ほどしていた。ボケに共通するのは体の動きがトリッキーで時折まぬけな声を出す。とにかく声がでかい。妙にバカバカしかった。


そうだ、自分を客観的に見てもバカバカしいのは同じだ。友達いない、酒飲めない、話下手、笑えない、苛々、飯が偏食、無料動画を見てはボヤキ、大金をあっさり支払い、くだらないことに変にこだわっていたりする。別に言いたいことも何もない。結局自分には法律を守ろう、自分を大切にしようなどというショボいスローガンが眠っているだけだ。今の自分は地雷がないと分かっている道を地雷があるかのごとく、虚しい危機感を持って歩いているような状態。イメージがないんだろう。