闇夜の年

コーラを飲んだが、あまり入っていかない。どうも食欲がない。神経を尖らせ続けていたからだろうか。
20年以上も生きていれば時季の雰囲気を嗅覚で察することができる。この年末、急速に場が終極に向かって煮詰まりつつある。
そして、年が明ければ呆けた老獪の如く、弛緩した空気が世間に蔓延し、年末の異様な雰囲気で麻痺させていた取りとめもない現実との向き合いが再開、半ば未来への絶望の状態で正月三が日が幕を閉じる。
そして成人式、センター試験と世間のイベントごとはヒートアップを増すものの、そんなもの自分にとっては既に幻影でしかない。そのうち一級の寒波が押し寄せ、寒々しい気候を過ごし、なんとなく一月が終わり、世間は「もう今年の12分の1が終わってしまいました。早いですねえ」ともっともらしい時間の切なさを語りだすが、全く同意できぬまま2月を迎える。
2月になればスポーツニュースを見ていると人気がない、人気がないと言っている割りには相変わらずプロ野球のキャンプ特集。キャンプがニュースになるというのはどう考えても異常。そして、ちらほら卒業式がどうのこうのという雰囲気になりだし、「2月は短いですねえ」という数量的にもっともなことを誰かが述べて終焉する。
3月となると年度末であり卒業シーズン、多数の人間が異様に変化、変貌を遂げるあらゆる移行期間ということで場が混乱、季節の暖が便乗して、世間全般、異様に前向きな雰囲気が醸し出され、陽のオーラがピーク。陰者にとっては発狂しそうな日々が続く。
4月は桜が過大評価され、花見という狂いかけたイベントが各地で勃発。あらゆることの始まりの季節で、「慣れ」というものが異常に恋しくなる季節。
5月になると某大型連休により、完全なる精神病患者が続出。連休中の浮かれた連中が全員狂人なのではないか、そう、狂人であろう、と納得するほど気狂いの月。
6月になると「今年も半分終わった」などという何の意味も無い発言が飛び交うようになる。いよいよ暑くてやってられない季節となり、梅雨に入っただの明けただのでやはり狂いだし、「ジューンブライド万歳!」と半ば自棄糞気味で叫びだす始末である。
7月になると輩どもが外に飛び出し、あらゆる不快指数が急上昇しだす。6月中旬くらいに今年こそはエアコンを使用しないとAくんは決心するも、あっさりと折れて7月末には結局使用しだす。突発的にエロいことが最も浮かぶ季節。肌を露出したJ性にD性が欲情するという図式があり、さらにK奮してR出したD性がT捕される。
8月になると暑くて、イルクーツクあたりに行く妄想をしだす。