師走の鈍行列車

11時間掛けて地元へ戻ってきた。6回ほど乗り継いだ。
帰省ラッシュに巻き込まれたが、鈍行だったからか、大体席に座れた。
列車の席に座るとぼんやりとしている。職場でぼんやりとすると誰かに監視されている感じがして強迫観念に襲われるのだが(「私は仕事をいまかいまかと待ち受けている。そのためぼんやりとしている」などといちいち“ぼんやり”する説明を脳内に添えてぼんやりとしているのである)、身も知らぬ連中しかいない列車の中ならそんな観念にも襲われず、堂々とぼんやりしているのである。
列車に乗っているときは接続のことを考えたり、今までの人生のいろんな事を思い出したりして、案の定、焦りだしてきた。私は現状に満足していないのである。しかし、無力な自分には今が手一杯ではないかと思えてもくる。夕食の献立を決める感覚で人生の選択肢を選び続けた結果だ。
ともかく私は同類を探さねばならないと思う。そんなことを考えていたら列車内のセクシーな女性の光沢感のあるストッキングに見とれそうになったり、金切り声の大声で話す女子に憤怒しそうになったり、似たような18キッパーかなあとか思ったり。車窓を見れば無数の建物、人間があり、こりゃ自分もかなりちっぽけだなあと思って、世の中から見れば自分は大して不幸ではないのだと自分に言い聞かせようとすると恥辱を受けた気がしてしまって、今日の昼飯の立ち食いソバ旨かったと食べ物のことで思考を誤魔化してまたぼんやりとした。