まやかしの知性

何をするにも自信が持てない。書店で本を買うだけでも財布から金を取り出す所作がぎこちなく、釣りを貰う際もおろおろしている。映画館で入場の際、チケットを渡す際に折り目を付け忘れただけで罪悪感が生じる。
仕事で何度も走り慣れた国道沿いのチェーン店が立ち並んだ閉塞感に怯え、たまに繁華街を歩けば、歪んだ性欲を持て余した連中ばかりが歩いているように思えて恐怖し、稀に中年にスナックにでも連れて行かれたら、さっさと愛想を尽かしてくれと頭の中で祈り続けながらも居続けることの哀しい様相。
数十年生きて死ぬ。この現象にどうして人々は熱中するのだろうか。人生のマジックは一体何なのか。これからもずっと頑張ることを手探りで確かめ続けなければならないのか。そうして答えを少しずつ明らかにしなくてはならないのか。まだ大丈夫なのだろうか。その「まだ」の境目がどこに漂っているのか、見えてこない。