「子供の頃の夢」

幼稚園時代はケーキ屋になりたかったことを覚えております。幼稚園の組では自己紹介の紙を壁に貼り付ける所作を施しており、ケーキ屋になりたいという女子は複数見受けられましたが、男子は自分だけで(ケーキというと女子というイメージが組内で蔓延していたためか)、自分の紙を見た組の者に若干からかわれた様な記憶があります。
その頃から「男だから」、「女だから」という固定観念(当然、そんな言葉は知りませんでしたが)が嫌で仕方がなかった記憶があります。
小学生低学年になるとお好み焼き屋がいいと思い、高学年になった頃には夢などありませんでした。
それにしても自分は幼少の頃、世の中を甘く見ておりました。自分は子供の頃に親に連れられて銀行によく行っておりましたが、最初、「銀行」という施設に行けば勝手にお金を貰える、まさに金を配給する施設だと信じて疑わなかったのです。やがてそこで貰えるお金は仕事で苦労して稼いだ金であることを知り、気落ちしたことを思い出します。ケーキ屋やお好み焼き屋にしてもそうです。ただ単純にその食べ物が好きだからそれを生業とする職業に就きたいという考えは非常に甘いことであると後々知らざるを得なくなり、土日も働き、客が来れば常に対応し、毎日同じメニューを切り盛りし、やがて年老いていく外食産業の重労働ぶりにも嫌気が差し、ついには食べ物関係で働くことを人生の選択肢から外しました。所詮、子供の頃は圧倒的な消費者であり、その圧倒的消費思考からの脱却が急務だと思う有様ですが、やはり今もどこかに完全消費者に成り果てたいという気持ちが常に頭にあり、葛藤は終わっておりません。


ちなみに今の自分の夢は、彼女と二人でつつましくアパートを借り、仕事をし、旅に出かけ、映画を観にいったり、たまに驚くようなプレゼントを渡し、毎日喋り合って楽しみたいだけなのです。