一筋

 会社に着いてから帰るまで、常に罪を犯している意識が拭えなかった。他の部署が夜遅くまで残業だからとかそういうこともあるけど、自分自身が目的意識もないままにぼんやり仕事をして金を貰っていること、そして仕事以外でもこれといった目的も無く生活しているので、罪悪を感じるのは仕方がないのかもしれない。
 単純に、人に生かされているのに人の役に立っていないという意識が罪悪感を作り出す。要は人に嫌われるのが怖いだけなのだ。
 朝、テレビ番組で女優の田中さんとやらの肉声遺言だかを聞いて涙をしたわけだけども、あそこまで克己心を持って死の間際まで生きることはできるだろうか。
 自分は無名人だし、ああまではなれないだろうけれども、生まれていたのか生まれていなかったのか分からない人間にはなりたくないと思った。
 自分に合った世界はどこかにきっとあるはずなんだ。そう思って生きなければ死んでいるのと一緒なんじゃないか。