エレベーター論

 日頃、乙女心が介在している私は、いちいち気を遣うエレベーターが苦手である。
 複数人が乗っている時、「開」「閉」ボタンを押す係りという割り当てが存在し、それを私がやる状況に陥った時、「開」ボタンを押し続けてやっているというのに、降りていく人間には一切合切会釈もせず、般若のような顔で降りていく者がいるので苦手である。
 乗る際には、複数や男性一人だけが乗っている場合はさほど気にせず乗るのであるが、女性が一人だけで乗っている場合は、乗るのを拒否する具合である。女子が苦手なものは「夜道」、「密室」などに男が現れるという状況であることは理解しており(そうして驚くほど甘い食べ物が好きである、四半世紀で得た女子の性質に対する知識はそんな程度である)、女子にはそのような苦行染みた状況を過ごして欲しくないがために私はそっとエスケープして階段を使ったりする具合である。そうしてそんな優しさは世の中ではあまり気づいてもらえないのであるが、それでいいのである。