粉塵此処に窮まりけり

 どうしたものか、夕方、全身が粉塵だらけであった。
 午前中から何かの倉庫の敷地内らしいところに置かれた機械のタンクの中の粉塵の詰まりを取り除くという苦行染みた作業を行使し、顔を伝った汗が顎を落ち、背中の汗はつなぎに吸収されてゆく。汗と粉塵がまみえればぐちゃぐちゃとしたでんぷん染みた様態のものが腕や首にへばりつく。タンクを棒で叩き、粉塵を出す。棒で粉塵の塊に突っ込んで、粉塵を出す。人一倍運動神経が鈍い私は、体全身がくたくたとなっていく具合で、同行した嘱託のG氏の定年を過ぎているというのに軽やかな作業具合に感嘆したといったところ。
 粉塵を運ぶため、会社と倉庫の敷地内を三往復して午前九時過ぎから取り掛かった作業をどうにか午後五時には終えた。帰社中、体中にへばりついた粉塵の臭いと、夏草の湿気に塗れて発散した臭いが混ざり合ってムッとする。エアシャワーで全身の粉を落とそうとするも、完全には取れない。
 草臥れた顔をして午後七時過ぎにさっさと退勤する。きっと、勃起を抑えるために働いているのだろう。