リンジン

 恐怖、怨恨、哀愁、疑惑、嫉妬、憤怒、憎悪、呪詛、後悔、卑屈、虚偽、怠惰。すべてを背負って生きて見せよう。
(以下、意味不明)
 私は嫌いな人間=殺したい人間である。つまり、よほどのことでない限り人を嫌うことはない。私は人間に配慮できない人間が嫌いである。車を道路に食み出させて駐車したり、夜遅くにアイドリングをする人間が嫌いである。隣に住むものがそういったことをするのであって、常時、道路にでかい車を食み出させている(駐車場を小さく見積もった割には車と態度がでかいようだ)。そうして昨晩夜十一時前に私がうとうとしだした頃に永延と隣人の男がアイドリングをしたままエンジンを切らないのであるから、すっかり目が覚めてしまった。隣人は四人家族である。三十代風の夫婦と女の子供が二人である。営業風の男と専業主婦と幼子二人。土日祝日しっかり休んでいる。残業も大してなさそうだ(私が家を出る頃には家にいて、私が家に帰る頃にも家にいることも多い)。そんなことだから惨殺しがいのある家族のように思われる。
 けれども私はそうした詰らぬことで末代まで濁った罪を沈殿させたくないことだし、拘置所や刑務所で生涯に渡ってすごすなどと云うのは発狂以外何者でもないので惨殺は拒否する。では合法的に対処すればよいかと思われる。
 さておき今日、私が帰宅した時、車のドアを閉めるとどこかから「ドン」と音がした。そうしてもう一度ドアを閉めてみたらまたどこかから「ドン」とした。隣を見たら営業風の男が車のドアを閉めているのである。どうも帰宅時間が被ったのか。ドア閉めの被りが故意か偶然か知らぬが、故意なら必然、偶然であったとしても私が殺意を抱くのは必然である。私は偶然を信用しない気質なのである。