二〇一一年

1.がん‐ば・る【頑張る】
1 困難にめげないで我慢してやり抜く。(大辞泉より)

 大晦日。雪下ろしの転落事故死、火事で一家死亡などというニュースがテレビで報道されている。全ての不幸なニュースに感情移入するなど考え尽くしてしまえば、自身の精神を疲弊させ、人生までもが削られてしまう。だからあらゆる人間のあらゆる不幸を遮断して生活するのは間違ってはいないのだけれども、そういう生き方にいつも罪を犯しているような感覚を覚えてしまう。
 日本にとって嵐の一年だった。東日本を襲った大地震、大津波原発事故。報道を通じて、自然の驚異、人間の無力さに歯痒さを引きずらざるを得なかった。テレビ画面やネットニュースを通して「所詮、他人事」と思うには難しすぎるほどの失望や絶望の空気が自分の中に霧のように忍び込んでくる日々。
 マグニチュード津波を引き起こし、一万五千人以上の日本人の命が奪われ、兆しの無い中、節電、募金、救援物資、答えは時間を掛けて明らかにされていく。原子力発電所は必要か否かと問われ、あるものは沈黙をつくり、あるものは沈黙を破る。被爆の恐れがありながらも作業をする原発作業員。そうして自分は世界に生かされていることを知る。
  

 心臓がビートを刻み続ける以上は、生き続けようと思う。終えるまでの間、目の前の課題を一歩ずつ遣り遂げ続けたい。自分の殻を破りたいという気持ちを捨てて最初からいなかったかのような存在として消えてなくなってしまいたくはない。「頑張ろう」。今年ほどこの言葉を聞いた一年は無かった。「頑張ろう」という雄たけびを、身体運動に変換し、甘いメロディーに変換し、心、行動、習慣が変換し、世界が生きていく。


 頑張ることを手探りで確かめた一年が終わり、もうすぐ頑張ることを継続していく一年が始まる。気負うこともない、幸せになるには誰の許可も要らない。よいお年をお迎えください。