ノーズウォーター・ノンストップ

 週明け。六時に起きる。風邪を拗らせてしまって鼻水が脱兎のように鼻穴から垂れ流れてくる困った具合である。できればティッシュ箱を担いで歩きたいくらい。
 今日は別の部署に異動する嘱託の狸さんの引継ぎのために狸さんが今までやってた点検場所を一緒に巡回する。車内は一人でなく二人である。いつもとは違う。一人だと奇声を上げたり、泡を吹いたりしても(泡は吹かないけど)誰にも迷惑を掛けないが、二人だとそういうわけにはいくまい。当たり前のことだが複数の人間と空間をシェアする際、気遣うことが発生する。
 修理を一件終えて、二時間ほど場所を案内されながら運転して昼食時間になる。コンビニ駐車場で暖房を効かせた車内で食べる。狸さんはコンビニ弁当とミニのどん兵衛だ。私はマザー弁当とハンバーガー、なのだが弁当を食べてハンバーガーも食べる偏食ぶりを見られるのが恥ずかしくてハンバーガーは食べなかった。
 十分ほどで昼食を終えると、狸さんは「行こう」と言うので、飯を掻き込んでから碌に休めない状態で運転を再開する。雨が降ってくる。ワイパーを一番間隔の遅い速度で動かすと数秒間フロントガラスが雨粒で見づらい状況になる。そうしてワイパーを一段階早めると今度はワイパーが過度に動いているような感じで微妙なところだ。一時間ほど運転したらさすがに疲れて運転を交代してもらう。
 そしてまた修理一件。修理中も鼻がだらだら垂れてくる。マスクをして誤魔化す。一連の動作を終えるとティッシュで鼻をかみまくる。場所案内が再開する。TO市はラーメン店が多いな。白いたい焼き屋もある。店員さんがのぼりを振っている。そののぼりはぼろぼろだ。私はこれからこの街を走ることになる。
 何か今日も疲れた。自分のキャパシティが広がることを実際に目の当たりにしたわけだけども、これから先どうなるかは分からないが、とりあえずやってみようと思う。
 帰りに風邪薬を買いにドラッグストアに寄る。風邪薬をかごに入れてから惣菜パンを見る。唐突にパンを踏んづけてぺしゃんこに潰したくなる。焼きそばパンをかごに入れる。
 レジで精算する。ポイントカードを出す。お金を出す。商品の入った袋を持つ。すると店員さんがポイントカード、5%割引券、ポイント3倍券、レシート、お釣りの小銭を同時に渡してくる。私は千手観音と勘違いされているようだ。そんな高貴な者ではない。明日もノンストップだ。