悪夢的天候

 ガソリン臭い暖房の風、フロントガラスを磨くワイパーの金きり声が耳を劈く。道路は真っ白でアスファルトが見えない。吹雪。タイヤの跡だけを頼りに徐行のようなスピードで山道を進む。たびたび道路隅でハザードを付けて不自然に停止している車を垣間見る。ライトを上向きにしても視界は大して変わらない。ようやく街まで出るととうに日は沈んでいるというのに妙に明るい。街灯が雪に反射しているからだ。道路隅で轢死している鼬を複数の烏が突いている。冬の鳥の食糧への執着心は夏の比ではない。主要道路では融雪装置の水がおびただしく流れ、沼がいくつもできているようだ。低気圧に犯されて、ただ気だるい日常が厭わしい日常に変遷する。