昼、起こされる

 軽トラックの中で昼飯を食い、無気力に過ごしていると女が二人声を掛けてくる。逆ナンなわけがないと思い、停めている施設の従業員が車をどけとでも言ってくるのかと身構えていたら、保険の外交員であった。
 飛び込み営業ならぬ半寝の車に乗っている男に声を掛けてくるとは保険の連中は只者ではない。と思いつつ、アンケートにお答えください。というので遮断すればよいものを愚直に答えるのが私の性格である。アンケートを答えると生命保険はどこですか?などと言ってくるので、答えようとするが出てこない。普段、保険なんてどうでもいいと思っていて名称が頭に残っていないのである。飛んだ芥脳である。
 さて二分くらい考えて思い出した挙句、それじゃ金が掛かる、今の保険には擦り傷程度で効く物がある、などと女二人がわめくように自社の保険について説明しだす。食い物にしようという魂胆が垣間見えてくる。
 一緒に食事しながら提案したい。はあそうですか。保険以外のこともお話しましょうか。はあ私はここの県の住民じゃないですよ。いつもこの地域に来るのですか?いつくるかは分かりません。明日はどこにいますか?明日はどこそこにいる。どこそこは私たちの拠点なんですよ!はあ。では明日昼に電話しますね!
 などということになってしまった。ビジネスとはいえ女性に食事を誘われてまんざらでもない調子で断らなかった私が悪いのである。恥じる。