五月雨、掻き乱れ

 殊更に胸を張って言える話でもないが、私は女性にもてない。
 無論、それにはそうなるだけの理由がこちらの側にあることは確かで、それは私の場合だとまず容姿が醜いとか対人能力が低いとか、或いは仕事ができないとか不器用とか毛深いとか、いろいろに数え上げられるのだが、咥えて持って生まれた性質が酷く陰気にできているため、やたらに自信無さ気に行動する点というものが、自らの首を絞めている気がしてならない。
 そうした私であるならば、まず普通の恋愛は難儀で、女性と会話をすることすらままならない惨状。だが、このままでは人と無縁な老後を送り、孤独死してしまうであろうと、何か腐敗臭を漂わせた1Kの雑然としたアパートの一室に死体が蹲っている光景を想起しては、このままではダメだ、と奮起し、そうして婚活業者を利用している次第である。
 前回のカフェ店員(30)と会った際は待ち合わせがしどろもどろとしてしまい、カフェでもまともに会話できず、「フィーリングが合わないようです」などとメッセージを敲き付けられ、当然のように敗北したのであった。
 

 私は今日新たに人と会う約束を取り付けたのである。まず朝、エステに行ったのである。というのも顔の肌荒れが酷く、とても凡人の皮膚で無い、何か皮膚病患者の面持ちをしていたので、これは相手の気持ちを考えると居た堪れなく、エステに向かったのである。
 事前に汚れをチェックすると、ひどく毛穴が汚れており、小栗旬似の店員もこりゃ汚れてますね、などというので時間を掛けて治すしかあるまいと決心した。二時間、顔を泡だてられて終えた。
 時間を見ると正午五分過ぎである。事前に正午に用事がある旨を述べていたが、作業が丁寧な店員なので時間を回っているのである。
 これに慌てたのは今日の女性と会う時間は正午であり、遅刻する旨をメールしなければならなかった。畜生うまくいかねえな。
 
 急いでエステを出て、待ち合わせ場所のビル街の数階のエレベーター前に向かう。会う。はじめまして、はじめまして。
 やさしそうな人である。店へはいる。喋る。食べる。二時間後、別れる。