日誌壱

未明、ビジネスホテルのベッドの上、三時四五分に目が覚める。家に居るときも最近この時刻に目が覚め、二度寝の苦しみを味わっている。
二度寝。七時に起きる。
八時半に朝食をとる。
バイキング形式である。私は豚野菜の煮物と唐揚げ、サラダなどを取り、庄内米を器に盛り付け、ふむと四人席を一人陣取り、黙々と食す。
平らげて腹八分目。それで止しておけばいいものをまた器に米飯を盛り、カレーを注いだ。
腹が一杯になった。
部屋に戻り、チェックアウトの準備を進めてながらにラジオを掛けていると、某宗教のラジオがやっている。自分を焦らせることは自己弁護で、自分を誤魔化す行為だと某大川氏が述べていた。なるほどと思った。
チェックアウト。小雨の中、歩く。ホテルの冷蔵庫に飲みかけの爽健美茶を冷やしたまま出てきてしまった。いらねえや、と吝嗇な思いを打ち消す。
 待ち合わせの公園に着くもまだ時間まで二時間ある。

 私は歩きながら、会う女性に対し、開口一番何を喋ろうかと思い過ごす。大義そうに喋るべきか、何かしら気の利いた台詞を言うべきか、結局思い浮かばない。
続いて微笑を浮かべる練習をした。目を開いて歯が見えるように。しかしながらにらめっこをするような男の顔が水たまりに映っていた。
 公園を散策する。とある直木賞作家(故人)の記念館があったので入る。書斎が再現されていて面白かった。文藝春秋が積まれていたり、農協の通帳がほったらかしになっていたり生活感がある。
出る。雨が降ったり止んだり、折り畳み式の傘なのでしまったり出したり難儀する。
歩く、歩く。遠くから太鼓の音が聞こえる。工業高校がある。野球部が応援の練習をしているようだ。
歩いたり、雨が止んだらベンチに腰掛けたりして時間を過ごす。正午を回る。十二時半過ぎに相手方が到着する予定だったがメールはまだ来ない。
ぼんやりと池を眺めると軽鴨が数匹、脇で休んでいる。

嘴で腹を掻いているものもいる。悲鳴のような鳴き声が聞こえる。孔雀のような大きな鳥が小屋に閉じ込められている。小屋の外では烏が皮肉そうに飛び回っている。
十二時半を過ぎた。公園内の神社前にいます、と女性にメールする。
なかなかメールは返って来ない。軽鴨を物憂げに眺める。

しばらくすると、今家から出ます、とのこと。女性はサービス業で朝から働いている。今の時期は忙しいのだろう、と曇り空をぼんやり眺める。
一時を回る。神社の鳥居にいると女性がやってきた。