とは言いつつも野球は好い

自堕落の中の観戦。遠く忘れていた興奮。この体感している興奮自体は、自分にもあったはずだ。
侍をイメージした紺のユニフォーム。凛としたナインが最後の闘いに立ち向かう。
嵐のような韓国の九回裏同点劇。選手個人個人の思いというものが交錯し、延長十回、劇的な結末を託されたのはイチローであった。涙ぐみたい名勝負というものが存在していた。
センター前に飛んでいく球、生還する勇士、熱っぽい心をばら撒き散らしたイチロー。彼らは見事なほどに人々の心に種を蒔いてくれた。
純粋に熱狂することは日常のどこかに隠されている。そんなものを、自分にとっての熱狂というものを、探してくれというメッセージを自分は受け止めた。

1980年、ドラフト一位で巨人が指名してくれて、私は巨人の一員となりました。
さいころ、野球選手になりたい、ジャイアンツに入りたい、その夢を持って頑張りました。
そして今日、その夢は終わります。
しかし、私の夢には続きがあります。
その言葉を約束して、今日、引退します。(95年10月8日 原辰徳引退セレモニーより)