継続は力なりというが、力がないから継続できない

 きみは死人として生きていていいのか?きみがそれを望むのなら止めはしないが、もし、このままでいたくないのなら、欲望をもて。そして、じぶんの頭で考え、じぶんの身体で行動せよ。きみはもう若くはない。いますぐ動き出せ。

 自己啓発の類は俺には無駄だともう分かっている。頭の中に膜が張ってしまってもう動き出す気力がでない。並みの人間の性質を持ち合わせるのもかなり厳しいだろう。全く、異様な怠惰の持ち主だと思う。ハードルを越える能力がないから潜る奇行に出るしかあるまい。


 全く今日も疲れた。客の家を探すのに迷い続けて二時間も掛かってしまった。ポンコツのカーナビとポンコツの方向音痴が相まってダメだ。番地が同じなのに全く別人の家だった、というわけのわからない新鮮な失敗を経験。やる気は無いのであるが、異様な謙虚さを持って仕事をしている。
 酒は嫌いだ、女は相手にしてくれない、グルメも興味ない、旅行も適当、性格はひねくれている、かったるい。とても生きている人間とも思えない。七年前、私はジョブカフェというところで自由スピーチをさせられたが「夢は持たないようにしたい」という内容を発表した。確か労を惜しんで夢を達成させようとしても大抵は達成できないから徒労に終わる、故に夢は持たない方が人生を有利に進められるみたいなスピーチだ。
 発表時、場は白けきっていた。場にいたどこかの会社の社長は「夢をもとうよ」などと言ってきたが、それにはこちらが白けていた。「夢」とは一体何なのだろうか?死んだ人を生き返らせたいとか過去の失敗を全て消したい、とかそんなものが100%叶わない時点で「夢」なんてものはないものだと思っている。現在から未来の世の中での起こりうる事象が「夢」というならばそんなものに夢があるとは思えない。残酷な世の中だ、夢などない、だけどこの限られた中で旨味がどこかにあってそれを吸いたいと思って生きると人生が有利なんだろうな、と思うけど核爆弾が落っこちたらどうでもよくなるな、と思って生きている。