労働雷雨

「雷大会だ!」
太郎丸氏は年の割におどけてそう言った。休憩中、我々は雷雨降りしきる街を見ていた。雨風のおかげか、ムッとする油の臭いが飛んでいった。薄暗い施設内には引き続き生ぬるい空気が縦横無尽に駆け巡っていた。


朝起きた瞬間から今日は視界が揺れていた。眠りが浅いのか今日は体調不良であった。気力、体力もかなり際どいことになっている。
太郎丸氏を見ていると機械の組み立てをする機械人間のように思えてきた。一回取り付けたものを分解し、組み立て、また不具合があったのでまた分解し、といった感じで何度も分解したり組み立てる。
「フフフフ…」と頓狂な声で太郎丸氏が笑う。自分のあまりに稚拙な修繕方法に呆れたのか、ただ単純におかしかったのか。とても不器用には務まりそうも無い現場である。機械の複雑さに絶望を抱きつつ、さあ困った。
飯を食っていると五郎丸が話しかけてきた。「女性事務員が書類を持ってきたんだ。『所長に判子を貰っておいてください』と言って来たので叱り付けた。『自分で所長に判子を貰え』と言った。この会社は以前の○○社より甘い!」とのことだ。愚痴だ。不満ならまた転職してください。
朝食も昼食もほとんど口に入らなかった。それだけ胃が疲れている。
たまに農夫がやってきて機械をジッと眺めている。農業機械は食糧問題に大して重要な役割を果たしているらしいが、自分には単に巨大な鉄の塊である。
毎日が否応無くやってくる。体を自棄に動かしていると小刻みに殺されているような感覚に陥る。