高校野球展望

 浦和学院春夏連覇大阪桐蔭の夏連覇などが掛かっている今大会。今年は箕島も明徳も星稜も出るし、五年ぶりに甲子園観戦でもしようかなと。



君らの熱闘の翌日から
甲子園は秋になった
東南の海を駈ける台風が
思わず走りをとめてのぞくほど
試合は熱く長く激しく
翌日の空は
熱気をはらんでいるものの高く澄み
もう秋だった

それにしても君らが示したあの力は
一体何だったのだろうか

奇跡とよぶのはたやすい
だが
奇跡は一度だから奇跡であって
二度起きればこれは奇跡ではない

言葉がない
言葉で示そうとするのがもどかしい
一瞬でいいつくす言葉の奇跡が
ぼくにはほしい

勝利は何度も背を向けた
背を向けた勝利を振り向かせた快音が
一度 そして 二度起きたのだ

誰が予測できるだろう
祈ることはあっても
願うことはあっても
予測出来るはずがない
ましてや 確信など誰にあろうか

熱く長い夏の夜
人々の胸に不可能がないことを教え
君らは勝った
球史にのこる名試合は
箕島・星稜
時は昭和五十四年八月十六日
君らの熱闘の翌日から
甲子園は秋になった

「最高試合」阿久悠