五月蝿カレー

昨晩、疲労困憊かつ空腹状態でカレーライス屋に立ち寄ってみました。そのカレーライス屋は学生街に存在するカレー屋です(幾人もの学生らがただ黙々としてカレーを食べているあり様には自分はいつも家畜のようなものを連想させられ肌寒い思いをしておりますが、空腹なので四の五の言ってられません)。
残念なことに入店直後に出されたコップの中に蝿がこびりついておりました。自分は、ぐらぐら目まいがしながらこれもまた飲食店だ、これもまた飲食店の姿だ、驚く事はない、など激しい呼吸と共に胸の中でつぶやき、空腹者なりに狼狽いたしました。
「ちょっとこれ付いております」と私も飲食店バイト経験者なりに「蝿」という直接的な害を連想させる単語を発せずにそこのバイトらしき人間に誇示いたしました。すると「えっ!?あっ!」と一瞬、鶴のような声を発しておりました。そのバイトらしき鶴は頭を垂れることもなく、詫びの一言も何も無く、ただ淡々とコップの交換をするだけでそれ以降は不正を隠し通す潔白主張者のように、何事もなかったように作業をしているようで、やがてカレーライスを運んできました。
哀しくも空腹で四の五の言わずに完食した私は何事もなかったかのように帰りました。以後、このカレー屋に行くことは二度とありませんでした。