たったひとりの最終決戦



(1990年10月17日放映)

ドラゴンボールで最も心を打った話は悟空がピッコロ大魔王を倒したとき、ピッコロが悟飯を庇ってナッパに殺されたとき、べジータフリーザに殺されたとき、悟空が超サイヤ人に初めてなったとき、悟飯がセルを倒したときなどいろいろ候補はあるが、やはりバーダックの話だ。普通に話を追っていればなんてことはないのだが、なんつうか当時のフリーザの絶望的な強さに対するバーダックのやけくそさがたまらない。作品自体の抑揚感も半端ない。音響効果がすばらしい。


【追加】
この作品はバブル期のものだが、バーダックフリーザの図式というのは現代の格差社会の悲惨さを象徴しているようだ。フリーザバーダックを主としたサイヤ人を利用し、戦闘させて星を奪う、フリーザは安楽に宇宙船に乗っているだけ。サイヤ人は仕来りを守り、フリーザに仕え続ける。こうしてフリーザは皇帝の座を揺ぎ無いものとしてきた。
実際はこきつかっていようとフリーザサイヤ人に慕われ続けた。これこそ世の中の図式そのものだ。
そのうち、フリーザサイヤ人たちの突発的暴力を恐れてサイヤ人をほぼ絶滅させるに至る。そうさ、世の中で最も恐ろしいものは仕来りをぶち破る突発的暴力だ。
バーダックはいわば派遣社員。猶予のない派遣期間を投げつけられ、仕事先で怪我までしたというのに雇い主(フリーザ)にあっさり裏切られ、仲間を殺されるハメになり、自分すらも攻撃される。仲間と息子(カカロット)のことを思い、最後の意地で強く真っ直ぐに己の存在を賭けて雇い主にぶつかっていくさまはまさに漢。