再会、圧倒的困難、虚しい自己愛、そして投了

閉店飲み会。一年近く前に辞めたバイトの打ち上げがさっきまであった。
終わった。良い意味でも悪い意味でも、まあ悪い意味だけど区切りがついた。ただ一切は過ぎ去ることだ、今日のこともさっさと忘れよう。いちいち今日のことを後悔することもないだろう、どうせ二度と会わない人間ばかりだろうから。事実としてはとにかく俺は口下手で、飲み会に向いてなくて、社会不適合者だと確信しただけだ。


なんつうか飲み会の店に行くまでがめちゃくちゃ緊張する。自意識過剰なんだろうけど不安でしょうがない。で、店にいくと皆いるわけよ。猛者がさ。知らない人もいるし、すげえ緊張した。懐かしいわけですよ。亀吉とか正夫とか飯塚とか奈留美さんとかその他もろもろ。懐かしくてそれは本当によかった。もう心置きなくあのバイトのことを完全消去できる。
会った瞬間がその日のピークだね、その後はぐずぐず。
去年、高校生だった連中がすげえスタイリッシュに大人びててさ、社会人になってる。この敗北感はなんだろうね、男子はカッコよく、女子は可愛くなっててさ、普通に彼氏彼女あり。きっついわー。話題はパチンコと仕事と女の話。ついてけね。パチンコパチンコですよ。それで皆、タバコすぱすぱ、酒がぶがぶ。未成年者でも酒タバコお構いなし。幼児を連れてきた主婦の方も普通に日付変わるまでいました。その幼児がたまになついてくるけど、俺を悪者に見立てて足でけってくるんですよ。それを笑いながら、ハハハとあしらえたり。旦那さんが迎えに来てたけどイカつい感じで幼児を軽く蹴ってた。人望があれば少々柄が悪くても許されるのだ世の中って。人望がない俺は謙虚に、そしてもっと勉強しないとダメだと分かった。
席では苦手なのに無理やりタバコ吸ってたからなあ俺。タバコを吸いたいのでなく、空白の時間をタバコで埋めようとしたんだけどきついわ。俺は今日、人望を作ろうと誰かと仲良くなろうという計画を密かに持っていたのだが、もうめげた。孤独に生きていたいと強く思い始めてしまった(最も人間には様々な種類の人間が居てこの地球のどこかに馬が合う人間もいるという可能性を追うこともしなくてはならないとは思うが)。
なんとか話しないとと、どうせその日限りの人間だろうってことで自分を出会い系ばかりしている如何わしい男って設定にしてさ、なんとか空白の時間を埋めようとした。
「出会い系でさ、これこれこういう感じで会ったりしてるんですよ」
「ええっ、金輪際さんってそんなやばいことすんの?」
こんな虚しい会話をしたが話が広がることなく、あっさり会話相手は他の人間のとこにいってしまう。俺の話し方は抑揚とか勢いと言うものがないのだ。悪い印象を与えたことだろうが、でもまあ良い印象を与えても空手になるだろうから、悪い印象を相手に与えて去るというのも潔くて一興だったと思う(もう会わない相手なら悪い印象だけ与えといても大して損ではない)。さりとて、俺の会話能力の限界を悟った。
ああなんだろうね。結局一言も喋らない時間が1時間強はあった。何を喋らばいいか分からないし、喋っても二言くらいで止まるし、声小さいし。すげえよ、他人の目線がこええし、あの空間にいた自分を褒めたいね。一歩ずつ前進するしかないんだろうけど。なんか歩調が明らかに常人と違いすぎる。世の中のいろはを全く理解していない。きついね、俺の人格だと人生の難易度たけえええ。


その後、二次会にも行っちゃいましたからね。一次会で空気だったから帰ったほうがよかったのかもしれんが、一次会で帰ったら俺の精神状態がすげえ嫌な感じになるとわかってたから、二次会でカラオケして帰った。まあカラオケ店でも全く喋らなかったけど歌だけは歌えるからなあ。
とにかく協調性なし。人と親しくなる要素が限りなくない。もう今日は不安で夜も眠れねえ。生きるのは困難だ。交通事故で俺よりまともな奴一杯死んでるのに申し訳ないなって思ったり。なんかさ、消えたくなった。就職怖い人生怖い人間怖い。
誰にも誕生日だと言うことを言わなかったから自分で言うよ、俺誕生日おめでとう


〜散逸のラーメン店編(完)〜