ベース・ボーイ 

何を目的として戦っているのかもわからない。漂うのはただ万能感と無力感。

 携帯電話は進化したおしゃぶりだと思う。今年はiPhone 4Sが発売されたのだけれども、所詮おしゃぶりだと思う。
 電車やバス、待合室、あらゆるところで人は携帯電話を弄っている。メールをしているのだろうか、ネットをしているのだろうか。いずれにしても何かを反応させたり、何かの反応を待っているのだろう。着信があれば安心する、メールが返信されれば安心する、ネットで情報を入手すれば安心する、だから皆は携帯電話をあちこちで弄っている。まるで赤子が乳を吸うように。皆、ただ安心したいだけなのだ。
 この頃、毎日無気力だ。やるせない。カルトに陶酔するか、いや、いけない。心が型に嵌まるだけだ。心を解放し、多様性、自由度を回復することが大切だ。やはり精神科へ行くべきか。
 社会にて、人は愚かな一面をなかなか見せてくれないものだと思う。それがなかなか辛い。入社当時は仕事で使わないスーツで出勤していたが、そのうちどうでもよくなり、作業着を着て出勤するようになった。こんな自分が許せないといったこだわりも緩やかに消えていく。自己愛が萎む。
 人間と動物の境目すらも分からない。害虫といえども虫を殺すのが辛い。赤の他人が赤の他人を殺すのは許せて、自分が害虫を殺すのは許せないとは、滑稽だ。
 昼休み。気が付いたら携帯電話を動かし、Yahoo!検索で「おっぱい」と画像検索していた。疲れきっていた。いやらしい検索をした行為が虚しいのでなく、検索された画像を見ても無感情であった自分自身が虚しかった。
 私は、ただ安心したいだけなのだ。