ノルウェイの森(上)

ノルウェイの森(上) (講談社文庫) [ 村上 春樹 ]
主人公ワタナベトオルの主に大学時代を書いたような作品で付き合っていた女子と主人公の深層心理というかなんというかニヒリズム満載な脳内を読んでいる感じか。一昔前に社会現象になったというのは知っていたが、まさかこんな虚無的なものがベストセラーになっていたのかという感想。
主人公は大学では友達がほとんどおらず、一人で飯を食ったり、一人で旅に出たり、休日に一人で寮のロビーで過ごしている孤独な主人公といったイメージ。でも高校時代からダブルデートしたり、大学時分はモテる先輩と仲良くなって夜の街を練り歩き適当にセックスに励んだり、急に同じ講義に出ている女子から誘われたりと充実している面も多い。適当にセックスしてる様はかなり虚しい描写になっていたが、童貞から見れば充実してるだろう。
女子とデートをしても何も喋らずに二人、ただ都内を歩くだけで、何も発しないままただ歩き、どこかで休みながら少しずつ会話をする場面がどうにも胸が詰まる内容だ。
アパートの電話を取り次いでもらう様や大学の門にバリケードがある様など時代を思わせる文章も新鮮である。手紙にしろ待ち合わせにしろ携帯電話がなく、「待つ」という感情を今の若者よりも深く味わっているように思える。題名が「ノルウェイの森」ってのはなんか違う気がしてしょうがない。自分自身、このタイトルのせいでてっきり森の狩人が丸太を切って今日も楽しかった、みたいな作品を想像していたから正直、内容の充実さに感動してしまった。