変人二人旅

9:30〜

 待ち合わせ場所に行く。ジョージ(以下J)が国産車で既に駐車場にやってきているので、有無を言わずに乗り込む。「虫取りでも行くのですか?」「そちらは強盗でもするんですか?」
 私は麦わら帽子にポロシャツ。そしてJはグラサンとマスクという至極、変装意識の高い格好である。そしてJの運転で悪戯に出発した。
 車内。古い洋楽が掛かっている。J氏は洋楽CDをコレクションしている。高速道路に乗る。
 長年全国を闊歩した経験の持ち主の氏との会話は政治ネタ、自動車ネタ、地理ネタ、そしてなぜか私を異常性欲者と見立てたスペルマネタばかりである。私は興味の無い話には適当に相槌を打つ。そうするとJに「何もわかってないのでしょう」と突っ込まれ、苦笑し、何か白々しくなりかける。そして有無を言わさずに「あなたは人の話も聴かずにコくことばかり考えているのでしょう!」とJに畳み掛けられるという展開が数十回続くだけなのである。そしてJは「なんだよ!あの車!」「あのトラック厭らしいね」などと走行中の自動車のマナーに対して過敏に悪態をつくだけなのである。
 しばらくして車内に"Billy" Joelの『The Stranger』が掛かると「なんで我々変人二人で旅行なんか行かなきゃならないんですか!!」とJはがなりたててくる。「知りませんよ。若い女性がいないからしょうがないでしょうが」
 考えてみれば宿泊先を決めた以外は今回の旅行はノープランである。二人で行くというのに何も得る気がないのである。間抜けである。とはいえ、我々の行動が撮影されていて放映されるわけでもないので別に間抜けでもいいのかもしれない。いずれにしても二人では逝きたくない。
 そうして休憩でサービスエリアに着くと「これ棄てといて」とJに家庭ごみの入ったポリ袋を渡され、ゴミ箱に棄てに行かされる。そしてスタバに入る。注文したストロベリーチーズケーキフラペチーノが何時までたっても出てこない。後ろの客にどんどん抜かされ、10分ほど時間が掛かった。席に着くと既にJはコーヒーを呑みほし、何かを悟っていた風に見えた。若い女客が周りにたくさんいた。私には若い女性友達はいない。変人だからしょうがない。「変人だから○○」という思考が私の癒しである。しかし、先に「癒し」を変換しようとしたら『厭死』と出たから笑えない。もしかしたら私は旅に死に場所を求めているのかもしれない。この先生きていて楽しいこともなさそうだ。
 性欲がやや青年の苦悩に変換される瞬間を今もまた味わっている私は稚拙である。そしてストロベリーチーズケーキフラペチーノをぐっと飲み干す。甘ったるい。自分の中学二年時の思考くらい甘ったるい。
 再び、高速に乗り、敦賀ICで降りる。三方五湖へと突き進む。「三方五湖と云えば鰻ですよ。では鰻で検索してみますよ」とスマホで検索してみる。「精力付けてどうするんですか?」

11:50〜

 鰻屋に着く。「駐車場は日が出て暑いから日蔭に駐車しましょう」とJ氏。何か資材置き場みたいなところに停めると言い出す不良中年J。私は首肯し、やがて車を降りてすたすた歩くと店員からあっさりと駐車場所を咎められ、駐車場に車を入れるJ氏。Jという人は傲慢な元政治家○書である故に世の中のルールをかなり大まかに捉えており、一緒に行動しているとこういうトラブルが多い。
 兎に角、腹が減っているのか減っていないのかもよくわからないがとりあえず変人二人、鰻屋に入る。三十分ほど待つと鰻丼並み大盛り(2,520円也)が登場する。鰻が少ない気がするが、国産の鰻だからと無心に食べる。

12:30〜

 食べ終えて、レインボーラインなるところを走る。通行料金千円に顔をしかめるJ氏。道は永延と山道を走る。
ついた先はリフトとケーブルカーの施設だ。上がってみよう。
 
眺めはいい。



昼一時過ぎ、暑すぎる。さっさと降りよう。行きはケーブルカー、帰りはリフトで。「レインボーライン山頂公園は360°にわたって広がる三方五湖の大パノラマが美しい公園です。2005年にはラムサール条約にも登録され、1年を通して様々な花が咲き乱れ訪れる人を癒してくれます」が、癒される以前に超暑い。


三方五湖を後にし、小浜ICに乗り、天橋立を目指す。
「ナビゲーション頼みますよ」「はい」
……
「全然着かないではないですか?」「おかしいですね」
「私は運転してるんですよ。後ろで何をモゾモゾしてるんですか?」「」

我々は道を迷い、そうして伊根湾へとやってきたのである。こちらの遊覧船には一人660円で乗れる。困窮のJの分も払い、遊覧船へ乗りこむ。



鴎に餌として与える用の「かっぱえびせん」(100円)が売られていた


かっぱえびせんを手に持って船の外へ出してみると、恐ろしい勢いで鴎がやってくる。指が危ない気がしたのでえびせんを投げると、鴎がすぐさま咥えて行く。餌やりなんて悠長な気分にはならない。鴎は生きるために必死にえびせんに喰らい付いてくるから戦々恐々とするものがある。

伊根湾を後のし、今度こそ天橋立を目指す。駐車場へ行き、「飛龍観展望・股のぞき」なるところを目指すためにリフトに乗る。
本邦初公開…!こちらの73番のリフトに乗っている不良中年が五年前から散々日記で登場してきたJことジョージ氏である。

19:30〜

お宿
本日のお宿はグル―ポンで購入予約した全室レイクビュー、三方湖の美しさに、思わず見とれる•北陸の新鮮な素材を、本格割烹料亭出身の主人が調理。お肌にやさしい天然温泉。露天風呂からも三方湖敦賀ICより車で約30分。三方五湖は見どころ満載のお宿。


夕食

お品書き
食前酒:梅酒(三方産福井梅使用)
先付:若狭もずく酢の物(世久見産)
造り:ひらまさ 鳥賊 甘エビ 鯛梅だれかけ あしらい一式
椀物:もろこし豆腐 海老 枝豆 じゅんさい 柚子
焼魚:鰤の照り焼き レモン しし唐 酢蓮根
冷物:素麺 椎茸 三つ葉 海老 生姜 温泉卵
蒸物:冬爪吹き寄せ饅頭 枝豆餡かけ
焼物:チキンオーブン焼き トマトソース
小鍋:海鮮胡麻ピリ辛鍋(帆立 鯛 チンゲンサイ 茄子 椎茸 人参 練りゴマ)
御飯:枝豆御飯(若狭町コシヒカリ使用)
香物:梅干し(福井梅) 沢庵
デザート:マンゴーとグレープフルーツのワインゼリー 季節の果物のせ



満腹、完食…!

22:00〜

 テレビでは「35周年スペシャル 復活! サザンオールスターズの流儀」が流れている。サザン世代のJはノリノリである…。