六月と犯罪

現在、大宮のネットカフェの立てこもり事件発生から30時間以上経過して尚も未解決。人質の健康状態が心配です。


(追記) 深夜に犯人(40)を逮捕、人質が無事保護されたとのこと。人質の心身のケア、犯人の人権軽視をお願いしたい。

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六月は太宰が自死した月であり、大阪池田小、秋葉原東海道新幹線で通り魔殺人が起きた月である。
気温が上がり、湿度が高くなると狂気を隠しきれずに自棄を起こす狂人が歴史上、ちらほら現れる。
人は狂人に巻き込まれるとテレビ・映画・新聞でしか見たことがなかった『事件』の当事者となり、否応なしに「被害者」というレッテルを貼られる。つまり第三者からは永久に「被害者」として見られ続け、それまでの人生における快楽、成功などは無きものと同等扱いとなり、終了時点のみがクローズアップされ続ける。
仮に猟奇殺人の被害者であれば、得たいの知れない猟奇マニアに半永久的に奇怪な目で見られ続ける。どのような人がどのような殺され方をしたのかをただひたすらに晒し続ける『事件』。


理不尽だ。
生きている時は無名で、屍となって有名となるのは余りにも理不尽。
私は刑務官を志望した時期があった。その理不尽を囚人にぶつけたいと思っていた時期があった。だが、最終試験を通過できず、再犯率の高い社会を指を咥えて眺めるだけとなった。
そうして私はかつて貪るように読んでいた事件史を詮索しなくなった。誰がどこで死のうと知ったこっちゃない。私には救えない。


昨今は犯罪のニュース駆け巡るテレビを見ながら所詮は統計上の数字に過ぎないとも思うようになった。
あらゆる犯罪は太古の昔から存在し、一定の割合で通り魔・放火魔・ペテン師・強姦魔などの凶悪犯罪者が存在し、死刑囚を支援する奇特な女が一定の割合存在し、その女に一定の割合の死刑囚が吸い込まれ、獄中結婚をして名字を変えて吊るされて死ぬ。


『凶悪』は闇雲に人を傷付ける。
そうして物好きな女が底辺で大手を広げて『凶悪』が墜落してくるのを待っている。
これほど醜い光景はこの世にないと想う。